躍動する脳みそ

千川新のブログ

Have you heard jazz?

"Have you heard jazz?" 鳥は確かにそう呟いて僕の部屋の窓から飛び降りた。地上の獲物を一瞬で捕食するかのごとくコンクリの地面目がけて垂直に飛んだかと思いきや、すんでのところで着地せず調布方面に飛んでいった。鳥、バード、チャーリーパーカー……そう…

恐山

車は法定速度で東北自動車道を北上する。「……なるほど、このように〇〇さんでは、基幹となるプラスチックの製造に加え、SDGsや多様性(ダイバーシティ)の実現にも積極的に取り組んでいるんですね」「音読やめろ。クソガキ」運転席のマリが静かな低い声で注意…

議事録

A「で、どうします?笑 彼ら、通します?笑」 B「会場の沸き方から言って順当でしょう」 C「私もそう思います……」 D「いや、あのウケとはいえ小学生でメタネタですよ?」 A「そこは本質ではないでしょう笑」 B「今回のネットの反応を見るに、彼らを通過させ…

トビウオのかたちをした木片

「もしもし、マブチさまの携帯電話でよろしいでしょうか」 全く知らない低い男性の声。40代から50代くらいだろうか。バイトを休んでベッドで寝ていたら、知らない番号から着信が入った。外は梅雨時でザアザアと雨がふっていた。よく考えもせず反射的に出る。…

苦労猫

男は苦労人だった。苦労人は苦労猫を飼っていた。苦労人は餌を買う金を稼ぐのにも苦労した。働くのに苦労していなければ苦労人と呼ばれていないだろう。そのため、苦労猫は時折餌をもらえなかった。だから苦労猫と呼ばれた。だが、男は金が入るとまっさきに…

頭がギーってなる

妹が壊れたのは、僕が高一のころだった。 僕は、志望していた学区内トップの高校に進学した。高校受験の成功は、トロフィーや賞状とは無縁の中学生だった僕にとって、初めて他人に認めてもらえたような気がしたのだ。 しかし、入学して早々に、その自信も段…

世界の果てのぶっ壊れるような邂逅ver_0.1

彼女に出会ったのは、会社の近くのコンビニに昼食用のパンを買いにいったときのことだ。 彼女は、白く整った顔立ちに、黒い髪を首元まで伸ばし、半袖の白い綿のワンピースに、よく磨かれたプレーントゥの黒い革靴を合わせていた。美少女と呼ぶには美しさを重…

混濁(成彦のこと)

いつも通り成彦と遊んでいたときのこと。 古着でも漁ろうと渋谷のキャットストリートを歩いているとき、自販機で買った左手の缶コーヒーの微糖(BOSSのエメラルドマウンテン)をこぼしてしまった。注意散漫な僕のいつものことだ。 「あ、服、汚れた!」 その日…

外苑前のLust For Life

10月はまだ残暑と言っていいだろう。ユニクロの肌着の上にカッターシャツが肌に張り付いて不快だ。兄の結婚式に出席するために、青山の式場の最寄りの外苑前で降りる。 相変わらず下品な街だ。大学時代、到底自分のスペックじゃまず受からない会社の面接を受…

ポスト天使

実家近くの4号線の歩道のガードレールの前に座り込んで、3日前まで転がり込んでいた男の家のタバコを吸う。 Twitterの男はクソである。 iPhoneが指す時刻1:32。片手には近所のセブンで買ったスミノフ。しかし国道というのはこの時間もひっきりなしに車が通る…

何をやっても疲れる

僕が20秒足らずのカットアップソング(僕らは自分らの曲をそう呼んでいた。パンクのレコードからサンプリングしたギターリフを適当にソフトで切り貼りして作ったようなジャンク・ロック)ばかりやる、粗末なバンドをやっていたときに、彼女は客として現れた。…

グライダー先生

お別れ会で、生徒の前でTheピーズの「グライダー」を弾き語りしようと思いついたのは、相変わらず一人で飲んでいる時だった。私は破滅的な飲み方はしない。スーパーで買ってきたワンカップを少しずつ飲み、酔いが適度に回ってきたところで、「くにゃくにゃく…

2021年

今日は2021年7月16日、東京2020オリンピックまであと一週間らしい。私がいつも喚いていることやテーマにしていることといえば、矮小で個人的な問題ばかりだが、ここ最近の社会の混沌の極まり具合は、それに対してもの申そうとしない、問題を是正すべきとも言…

世界の果てのぶっ壊れるような邂逅ver.0

彼女に出会ったのは、会社の近くのコンビニに昼食用のパンを買いにいったときのことだ。 白く整った顔立ちをした彼女は、パリッとした白いブラウスに、プリーツの効いた紺のスカート、黒い革靴を合わせていた。彼女を美少女と呼ぶには、自分の美しさを重く背…

田舎

田んぼに刺さっている安物のビニール傘凝縮された泥を吸ってぐちゃぐちゃを野に吐き出している ヘルメットを被った中学生がどうしようもなくそこに突っ立っているこの世は擦り潰された鉄片で人間は酸化した粉だった 15年の田舎暮らしの彼岸に水のない海を夢…

インマイライフ

「ビートルズのインマイライフのピアノソロ弾いてよ」「あれ、テープを早回ししているの知ってるでしょ」 彼女の言う通り、確かにビートルズのアルバム、ラバー・ソウルの日本盤のライナーノーツにそう書いてあった。あれはプロデューサーのジョージ・マーテ…